アルコールが睡眠に悪いと言われている理由

アルコールは睡眠に良くないと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

今回は、なぜ、アルコールが睡眠に良くないのかを説明していきます。

アルコールが脳に及ぼす影響(メカニズム)

アルコールは、脳への鎮静作用があります。

アルコールは脳内の受容器と結合し、ニューロンの発火を抑える働きがあります。

まずは、前頭葉にある前頭前皮質のを鎮静させます。これは、衝動を抑える機能があります。

つまり、衝動(理性や創造性)が抑えられなくなります。気が大きくなったり、普段はやらない大胆な行動をしたりします。

お酒を飲んだ時の、失敗談は前頭前皮質の抑制が外れたものからくるものだと言えます。

この鎮静効果がさらに進むと、脳の他の部位にも影響が出てきます。

頭がぼんやりしてきたり、意識を保つのが難しくなってきます。

アルコールは睡眠ではない

アルコールの量が増えると、覚醒を保つのが難しくなりますが、睡眠とは異なります。

睡眠中の脳波を調べた研究によると、自然な眠りの脳波とアルコールを飲んだ時の脳波は明らかに異なります。

また、体内のアルコールが分解されてしまえば、鎮静効果が切れてしまい、夜中の変な時間帯に覚醒することになります。この後、眠ろうとしても、浅い眠りになってしまいます。(肝臓が一生懸命働いている影響もあります)

さらに、睡眠中は尿を作るのを抑える抗利尿ホルモンの分泌量が増えます。しかし、アルコールは抗利尿ホルモンの働きを抑えてしまうのです。

夜中にトイレのために、何回も目を覚ましてしまうのは、このためです。

眠りが浅くなる上に、何回も覚醒する。以上のことが夜中に起きます。飲酒後の朝は、すっきりと目が覚めないという方も多いのではないでしょうか?

これは、しっかりと睡眠がとれていないことを意味します。

睡眠不足の恐ろしさについては、本ブログでもいくつか紹介しています。癌、心疾患、糖尿病など、あらゆる病気を引き起こします。興味のある方は、「睡眠の知識」をご覧ください。

アルコールはレム睡眠を妨害する

アルコールが分解されると、「アセトアルデヒド」や「ケトン」という化学物質が作られます。

このアセトアルデヒドがレム睡眠を強力に阻害します。

レム睡眠は生きていく上で、とても重要な働きがあります。レム睡眠の重要性については、「アイデアが出なくて寝られない 辛い時の解決策」をご覧ください。

また、深いノンレム睡眠に入ることもできず、睡眠の質が悪化することも分かっています。

脳の呼吸中枢が影響を受けて、睡眠時無呼吸症候群が悪化する恐れがあることも指摘されています。

つまり、「寝酒は、百害あって一利なし」だと言えます。

寝酒を続けると、依存症になる可能性も

寝つきが悪いということで、アルコールを飲む方もいると思います。しかし、今すぐにやめましょう!

というのも、アルコールによる入眠は、前述のように様々な悪影響があるからです。

また、アルコール依存症に陥る可能性もあるからです。

寝酒は、レム睡眠が阻害されます。レム睡眠がないと、記憶の整理ができません。記憶の整理ができず、脳内に溜まっていくと、身体は強引にレム睡眠をとろうとします。

夜にレム睡眠がとれないと、日中にもレム睡眠(夢)が生じてきます。

これが、アルコール依存症の人の妄想や幻覚の正体です。

日中に、現実と夢の区別がつきにくくなっている人は要注意です。いますぐ、寝酒をやめて、睡眠の改善に取り組まれたほうがよいです。

アルコールは胎児のレム睡眠を奪う

お腹の中の赤ちゃんは24時間眠っています。6時間はレム睡眠。6時間はノンレム睡眠。残りの12時間は、どちらとも言えない状態だそうです。

妊娠後期になると、レム睡眠が多くなります。出産1週間前ほどになると、レム睡眠は12時間ほどになるそうです。

このレム睡眠は、胎児の脳の発達に欠かせないものだと言われています。

しかし、母親が飲酒をすると、アルコールは胎盤を通って、赤ちゃんまで届いてしまいます。

前述の通り、アルコールはレム睡眠を阻害します。つまり、赤ちゃんのレム睡眠が減ってしまうことになるのです。

妊娠中は、アルコールを飲んではいけない理由は、ここにあります。

出産後も影響が残る

実は、飲酒の影響は、出産後にも出てきます。

妊娠中に母親が大量に飲酒した場合、出産後の赤ちゃんのレム睡眠が短くなることが分かっています。

また、赤ちゃんの脳波を測定したところ、電気の活動量が200%も減っていたことが分かりました。

母親の胎内にいる時だけでなく、生まれた後も影響が残るのです。

妊娠時のアルコールは控えたほうが良いと言えます。

授乳中のアルコールもやめたほうがいい

アルコールを飲んで授乳すると赤ちゃんが良く寝るという話がありますが、絶対にやめたほうが良いです。

これは、授乳するミルクにアルコールが含まれてしまうからです。

前述のとおり、アルコールは睡眠を阻害します。それが、赤ちゃんにも起きてしまうのです。

レム睡眠が20~30%減少します。

新生児の時期にレム睡眠が妨害された動物は、大人になってから社会性に異常がみられるということが分かっています。

自分の子供が正常に発達してほしいのであれば、授乳中のアルコールは、絶対に避けたほうが良いでしょう。

まとめ

「寝酒は、百害あって一利なし」です。

お酒の力を借りて睡眠をとるのは、睡眠障害を悪化させてしまうだけです。

これを機に、睡眠の在り方について考えなおしてみませんか?

お酒が好きだという方は、夕食時に飲むだけにして、寝る前の飲酒は避けたほうが良いと思います。

お酒と上手に付き合って楽しく飲みましょう!

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